ナレッジ・社員教育

音声指導のナレッジ化で、要約モデルを変えて確かめたこと

社員指導の文字起こし3件をGPT-6 SolとGPT-6.1 Terraで整理し、6本の出力を読み比べました。大きな不足は感じず、費用推計は約48.4%低下。切り替えの判断と、音声・文字起こしを残して再処理できる意味を記録します。

公開日 更新日
  • #社員指導
  • #ナレッジ化
  • #音声記録
  • #GPT-6 Sol
  • #GPT-6.1 Terra
  • #Gemini

社員への技術指導を録音し、文字起こしからナレッジへ整理する取り組みを続けています。指導の場では、作業の手順だけでなく、なぜその条件を確認するのか、どこに違和感を持ったのか、どう考えて判断したのかまで話します。後から読む社員にも、その考え方が伝わる形で残したいと思っています。

これまでの記事では、自動化したら説明が薄くなった経験や、読みやすく整理された文章だけでは文字起こしの誤りが見えにくかったことを書いてきました。10月4日の記事では、文字起こしの入口をNottaからGeminiへ切り替え、整理に使う辞書や、数値を残す指示も見直しました。

今回は、その後段にある整理モデルの比較です。使っていたGPT-6 Solと、新しく登場したGPT-6.1 Terraへ、同じ3件の文字起こしを渡してみました。

結果を読み比べ、費用も確認したうえで、本番の整理モデルをTerraへ切り替えました。モデル全体の性能を評価したものではありませんが、日々の指導記録を残す用途で、何を見て切り替えたのかを記録しておきます。

新しく出たTerraを、指導記録の整理で試す

GPT-6.1 Terraは、OpenAIの公式更新履歴では、2026年10月26日にリリースされたモデルです。公式のモデル説明では、画像を理解して考えることや画面操作に加え、明快で自然な文章を書くことも特徴として紹介されています。

今回試したのは、社員指導の文字起こしを読み、論点や判断の理由を整理する仕事です。公式に紹介されている特徴が、そのまま当社の用途での品質を保証するわけではないので、実際に使う資料で比べることにしました。

当社で「要約」と呼んでいる処理には、指導で話した内容を、後から探して読み返せる知識へ整える役割があります。文章を短くすることだけを目的にはしていません。

結論が合っていても、そこへ至る理由や適用条件が落ちていれば、次の仕事で使うときに迷います。一方で、話した順番をそのまま長く残すだけでは、必要な説明を探しにくくなります。細かな内容を残しながら、読む人が理由と条件を追える形に整理できるか。そこが、今回も気になっていたところです。

文字起こしを固定し、整理の工程を比べる

今回変更したのは、音声を文字にする工程ではありません。音声の文字起こしには、Googleの音声を文字へ変換するモデル、Gemini 3.5 Transcribeを使っています。その後、文字起こしされた内容を読み、指導の論点や判断の理由を整理して、ナレッジへまとめる工程が今回の対象です。

この二つは、分けて確かめる必要があります。文字起こしの段階で言葉が抜けたり、取り違えられたりしていれば、その後の整理にも影響します。また、文字起こしには残っている説明が、整理の過程で省かれることもあります。

以前の比較では、入口の文字起こしが違っていても、後段のAIが文章を自然に整えるため、完成した記録だけでは差が分かりにくくなっていました。今回は同じ文字起こしを両方のモデルへ渡し、整理工程でどう違うかを見ることにしました。

比較に使ったのは3件です。それぞれを同じ指示構成で、GPT-6 SolとGPT-6.1 Terraに1回ずつ処理させました。キャッシュは使っていません。

今回はGeminiの文字起こし性能を比べたものでも、音声から登録までの全工程を評価したものでもありません。文字起こしを受け取った後の整理モデルを変えたときに、費用、処理時間、出来上がった内容がどう違うかを見た、小さな比較です。

費用はほぼ半分に、待ち時間の差は気にならなかった

今回の条件で得られた費用推計と処理時間は、次のとおりでした。

比較項目 GPT-6 Sol GPT-6.1 Terra
3件合計の費用推計 0.307620米ドル 0.158654米ドル
1件当たりの平均処理時間 49.7秒 64.4秒

3件合計の費用推計は、Terraの方が約48.4%低くなりました。Solの約51.6%なので、費用はほぼ半分です。

記録を継続して整理する仕組みでは、一度の処理費用が小さくても、件数を重ねれば差になります。今回のように、同じ資料を整理する費用を抑えられるなら、日々使い続けるうえで意味があります。

一方、平均処理時間はTerraの方が約15秒長くなりました。ただ、私の使い方では、この程度の待ち時間はほとんど気になりません。社員指導の記録を整理する処理で、10秒、20秒早く終わることを重視しているわけではないからです。

もちろん、必要な内容が大きく抜けるなら、安くても困ります。私が知りたかったのは、この用途で使える内容を残しながら、整理の費用を下げられるかどうかでした。

なお、この金額は今回の3件と指示条件で得られた推計です。指導の長さや内容、出力される文章量が変われば、費用も変わります。また、整理工程の比較であり、文字起こしを含む仕組み全体の費用が48.4%下がったという意味ではありません。

6本を読み、必要な内容は概ね残っていると感じた

比較では、3件それぞれについてSolとTerraの出力を左右に並べ、元の文字起こしも開ける形にしました。保存された出力を省略せずに読めるようにし、計6本に目を通しました。

読んでみると、それぞれに良いところや気になるところがありました。表現の仕方や文章の長さにも違いがあり、同じ指示で整理しても、まとめ方にはモデルごとの癖があると感じました。

ただ、私が読んだ範囲では、Terraの出力で必要な内容が大きく不足しているとは感じませんでした。Solと比べて明らかに品質が落ちたという印象もなく、実務で使うための内容は概ね残っていると感じました。

費用だけでなく、実際の指導記録を整理した文章を読んで、Terraでも使っていけそうだと感じられたことが、切り替えを考えるうえで大きかったと思います。

ただし、元の文字起こしと一項目ずつ照合し、判断の理由や条件の抜けをすべて確認したわけではありません。モデル名を伏せた評価でもなく、同じ内容を繰り返し処理したときのばらつきも確かめていません。

そのため、「TerraとSolは同じ品質だった」とまでは言えません。今回比較した範囲では、必要な内容が大きく不足しているようには見えず、明らかな品質低下も感じなかった。そこまでが、実際に読んだ私の判断です。

読みやすさに加えて、理由と条件が残っているかを見る

指導記録を読むときに気にしているのは、後から読んだ社員が、判断の根拠をたどれるだけの説明があるかです。

技術指導では、その場の結論に加えて、結論を出す前に確認したこと、採用しなかった考え方、条件が変わった場合の注意なども話します。「この条件を採用する」という結論が残っていても、その理由が抜けていれば、別の案件で同じ扱いをしてよいか分かりません。

10月4日の記事では、整理するGPTへ渡す誤変換辞書を軽くしたことも書きました。詳しい記録はスプレッドシート側に残し、GPTへ渡す部分を1件1行の簡易版にして、当時13.6万字あった辞書を約1.4万字に減らしました。この運用は今も続けています。

そのときの試行では、計算結果は残っているのに、途中で使った係数が省かれたこともありました。そのため、数値や係数、計算の途中も残すように整理の指示を見直しています。辞書を短くしたことが省略の直接の原因だったかは分かりませんが、渡す情報を見直した後も、出力の確認が必要だと感じた経験です。

今回も、その経験は評価の前提になります。文章が短くなったことだけで良し悪しを決めず、説明を追うために必要な情報が残っているかを見る必要があります。

当社は元請会社から指示や条件を受け、作業や照査、資料整理を行う立場です。過去の指導記録が見つかっても、その扱いを別の案件へそのまま適用してよいとは限りません。今回の条件や資料と照らし、判断が必要な事項は元請会社へ確認するための材料を整理します。

そのためにも、ナレッジには答えだけでなく、何を前提にした説明なのかを残したいと思っています。今回の読み比べでは実用上の手応えがありましたが、こうした細部の確認は、今後の運用でも続けていくところです。

元データを残し、切り替えた後も確かめていく

AIとの相談や、比較した6本を読んだ印象、今回の費用推計を踏まえ、本番の整理モデルをTerraへ切り替えました。

切り替え後は、1件が登録されるところまで確認しました。その出力にも目を通し、見た範囲では大きく困るような内容にはなっていませんでした。以前より明らかに品質が落ちたという印象もありません。

処理が登録まで進んだことに加え、内容を読んで使っていけそうだという感触も得られました。ただ、これだけですべての指導記録に合うと判断するつもりはありません。今回比較したのは3件を各1回です。指導の長さや話題が変わったときにも、同じように説明が残るかは、実際の記録で見ていく必要があります。

当社では、整理したナレッジに加えて、元の発言を確認できる音声データと、Gemini 3.5 Transcribeで作った文字起こしも保存しています。そのため、今回の整理結果だけが手元に残るわけではありません。

音声を残し続けるための容量も、以前に見直しました。10月4日の記事で書いたように、WAVから、容量を抑えられるOpusという音声形式へ変換し、過去の録音46本は5.37GBから359MBになりました。当時確認した録音では、文字起こしの専門用語や数字に明らかな悪化は見られませんでした。

音声データが小さくなったことで、保管や管理もしやすくなったと感じています。保存用の音声はOpusにし、GPTへ渡す誤変換辞書は必要な内容を選んだ簡易版にする。その土台を使いながら、今回は整理を担当するモデルをSolからTerraへ切り替えました。音声や文字起こしを残すことと、日々の処理を軽くすることを、両方進めてきたことになります。

今後、新しい整理モデルを試したくなれば、保存した文字起こしを使って、もう一度ナレッジへまとめ直せます。文字起こしの方法を見直す場合には、保存している音声へ戻って処理し直すこともできます。

録音した時点で使っていたモデルの出力に、記録の残り方を固定せずに済む。この点も、元データを残しておく意味だと感じています。新しいモデルで必要な説明がよりよく残るかどうかを、過去の記録でも確かめられます。処理し直せば以前の抜けが必ず補えるとは限りませんが、元の発言へ戻って確認する材料は残っています。

これから内容を細かく照合する際にも、元の文字起こしや音声を参照できます。特に、判断の理由、数値を使った根拠、今回だけの条件が、読みやすく整える過程で省かれていないかを確かめたいと思っています。

今回の切り替えは、費用をほぼ半分に抑えられる結果が出て、比較した文章にも大きな不足を感じなかったことから決めました。10秒、20秒の処理時間の差より、必要な内容を残しながら継続して記録を整理できることを重視した判断です。

新しいモデルが出るたびに、品質と費用の関係も変わっていきます。当社でも、音声の保存形式を変え、整理モデルへ渡す誤変換辞書を軽くし、今回は整理するモデルを選び直しました。仕組みを使い続けながら、少しずつ見直しを重ねています。辞書を軽くしたときの費用の変化と、今回のモデル比較による約48.4%の低下は、それぞれ異なる条件で確かめた結果です。

音声と文字起こしを残しているので、今後のモデルでも、過去の記録を使って比較できます。以前は省かれていた説明を、より丁寧に残せるかもしれません。同時に、その処理にかかる費用を抑えられる可能性もあります。

今回、品質が上がったとまでは確認していません。ただ、読んだ範囲では大きな不足を感じず、費用をほぼ半分に抑えられる結果が出ました。こうした確認を重ねていけば、指導の内容をよりよく残しながら、継続するためのコストも下げていけるのではないかと感じています。


関連記事