AIに図面を作ってもらう入口が増えてきた――V-nasの画面操作、DXF生成、スクリプトを使い分ける
V-nasの画面操作から始め、構造図1枚をDXFと既存のスクリプトで再現しました。独立した線分、文字・寸法・二段引出線を当社の描き方へ合わせ、人がCADで確認して使うまでの経緯と、次の作図への見通しを記録します。
当社は、元請会社から業務を受け、土木設計に関わる作図、数量計算、照査、資料整理などを行っています。図面の作成・編集には、川田テクノシステムのV-nasClairというCADを使っています。普段の図面は、拡張子が「.bfo」の形式で保存しています。
前回の記事では、BFOの内部情報をAI側で読み取り、図面交換形式のDXFや画像にする仕組みと、V-nasの画面操作でDXFを書き出す検証を記録しました。図面の内容や数量計算を確認するための入口を整える取り組みです。
今回は、AIが私のPCのV-nasを直接操作し、既存図面の小さな断面を、新しい図面に描き直すことを試しました。さらに同じ断面をDXF生成とスクリプトでも描き、そこから構造図1枚へ対象を広げています。
きっかけは、YouTubeでAIを使って別のCADであるJw_cadの図面を作る例を見たことでした。動画では「外部変形」という言葉が使われていました。詳しい実装方法は分かりませんが、AIが用意したものをCADで使うなら、普段のV-nasでも試せるのではないか。図面を読むところから、作るところへつなげたいと思いました。
画面操作、DXF生成、以前から開発していたV-nas用スクリプト。三つの入口を、実務に合わせて選ぶ話が具体的になってきました。今回確かめたのは、形を描けることに加え、文字や寸法をそろえ、人が後から直しながら使える図面として受け取れるかという点です。
V-nasを直接操作して、図面の一部を描く
最初に試したのは、Computer Useという、AIが画面を見てマウスやキーボードを操作する方法です。私のPCでV-nasClair 2D2027を動かし、線や寸法を入力してもらいました。
対象は、樋門の川裏側にある翼壁の構造図に描かれた、小さなA-A断面です。翼壁は、水路の出入口の脇で土を支える壁です。躯体の外形と、その下の薄い均しコンクリート、内側のU字形を取り出しました。
今回は元図を見て、別の新規図面へ線を入力しています。原図の要素をコピーしたり、画像を貼り付けたりする方法とは別に、CAD上で形を復元する試みです。
最初は矩形を使い、外形と均しを描き、外形寸法や注記を入れるところまで進みました。その後、線の構成を見直しながら描き直しています。
途中では、直線や連続入力の選び方、参照点の移動、相対座標と絶対座標の使い分けなど、普段の操作のコツも伝えました。実際の試験では、座標の分かっている形を絶対座標で入力しています。人がいつも使うCADの機能を、AIにも一つずつ使ってもらえることが具体的になりました。
形が合った先に、編集しやすさがある
私が実際に触って気になったのは、線の重なり方でした。
躯体と均しをそれぞれ矩形で描くと、接する部分に同じ線が重なります。一本を移動したつもりでも、同じ場所にもう一本残ることがあります。実線と破線が重なる区間も、不要な線を整理しておきたいところです。
そこで、「必要な線を、できるだけ少ない要素で」と伝えました。すると、次は複数の線分を一続きにまとめるポリラインを使った作図になりました。
画面上の形はできていました。ただ、私が欲しかったのは、一本ずつ選んで直しやすい、独立した線分要素(LINE)です。要素をまとめて件数を減らすことと、重複や不要な分割を減らすことの違いを、具体的に説明する必要がありました。
たとえば、躯体の下辺1,700mmを左右へ100mmずつ延ばし、均しの上面1,900mmを一本にします。中央と左右の三本に分けず、共通する境界を一本で扱います。整理すると、外形と均しの実線7本、内側U字形の破線3本、合計10本の独立した線で作れます。
この条件で描き直したものは、私がデータを選び、触って確認しました。どこまでが一本としてつながっているかは、後で線を延ばしたり、位置を変えたりするときに効いてきます。担当者が直しながら使える状態も、作図の条件に入れたわけです。
DXFそのものをAIに作ってもらう
次に、同じ断面をDXFとして生成してもらいました。こちらはAIが図形のデータを作り、私がV-nasで開く方法です。
以前、DXFを使う理由を整理した記事では、CADの図面を外部プログラムへ渡す中間データとしての使い方を書きました。今回は、そのDXFをAI側で作り、CADへ受け渡す方向です。
独立した10本の線で同じ形を作る条件をそろえ、ファイルを用意しました。私が開くと、断面の形が表示されました。線種や色を調整しながら、画面上で一本ずつ操作する方法とは別に、図形をまとめて用意する経路を確かめました。
ここで、文字はどうなるだろうという思いもありました。DXFの文字には、私がこの仕事に携わってきた約30年の間、繰り返し悩まされてきたからです。フォントが合わなかったり、文字が大きく化けたりする問題は、ずっと以前からありました。渡す側のCAD環境や書き出し方が影響しているのだろうとは、以前から考えていました。
私の普段の図面の受渡しは、AutoCADの図面形式であるDWGや、CADデータ交換標準SXFのファイル形式の一つであるSFCが中心です。DXFは、受け取ってから見た目の違いに対応する経験が多かったと思います。今回は出力情報を自分たちで調整できるので、文字まで含めて、どこまで合わせられるかを確かめたいと思いました。
以前からのスクリプト作図も、同じ形で試す
もう一つが、AIにV-nas用のスクリプトを書いてもらい、V-nasの中で実行する方法です。スクリプトは、作図などの命令をまとめたものです。
これは以前から取り組んでいた方法です。以前のスクリプトの記事でも、Excelの情報から位置や内容を整理し、V-nas上で編集できる引出線を作った経緯を書いています。注記の一括配置や、線と文字で表を作ることなども試してきました。
私が過去から開発・検証してきたルールや資料を、今回のエージェントへバトンタッチしたことが、作図の土台になっています。その基盤を使い、目の前の断面や構造図へ適用を広げました。
DXFは図面データを受け渡し、スクリプトはV-nasに実行してもらう命令を用意します。AIが書くものと、CAD側で行う処理の役割が違います。
同じ断面を作るスクリプトも私が実行し、DXFと同じ形が描かれることを確認しました。初めは縮尺条件をそろえる調整もありましたが、以前の資産を今回の仕事へつなげることで、複数の方法を同じ題材で試せるようになりました。
小さな断面から、構造図1枚へ広げる
その後、川裏翼壁の構造図1枚へ対象を広げ、DXFとスクリプトを生成しました。側面図、平面図、四つの断面に、寸法、引出線、図枠や注記を含む、A1・縮尺1/50の図面です。
作り方は、既存のDXFから要素を取り出して組み直し、現行のBFOから出力したPDFと目で照らし合わせるものです。元図にある情報を使い、一枚の配置や表現を再現しています。設計条件から構造図一式を新たに自動設計した段階ではありません。
最初の出力から、文字や寸法の違いを一つずつ直しました。文字は高さだけでなく、幅、送り、改行、置く基準点で見え方が変わります。引出線も、線と説明文が見えていることに加え、人が選んで動かすときに一体で扱えることが大切です。
スクリプトの寸法を調べると、矢印や段の指定に引き継ぎ不足があり、引出線では自動配置と固定した座標を混ぜていたところもありました。自分たちの出力処理として、直す場所を具体的にしていきました。
修正後のスクリプトは、私が全図で実行しました。側面図とA-A断面の見た目を確かめ、代表として確認した寸法は、標準の白、実線、線幅、3.5mmの文字、指定した矢印の設定になっていました。送りや改行、余白も、普段の登録設定に沿って確認できました。
二段書きの引出線も、文字と線を一体で扱い、上段を線の上、下段を線の下へ配置できています。一部の下向き引出線では、下段をクリックしたときの判定や選択色の更新を確かめたい点が残っていますが、二段の構造と配置は確認できました。
引出線を一つ作る試作から、構造図1枚の文字や寸法まで当社の描き方へ合わせるところに来たことは、私にとってかなり衝撃的でした。
DXFは、使う条件を決めて区切った
DXFも、文字や二段引出線の位置を調整した全図を最後に確認し、私はこう伝えました。
完コピできていると思う。
今回の図面を自分のCADで見て、原図の見た目を再現できたと感じた評価です。
ここでは、読み込んだ文字のマージン、つまり周囲の余白を0のまま使う条件にしました。V-nasに登録している文字設定の余白は0.35mmで、読み込んだ後から登録サイズへ変更すると、字形の位置が動きます。
今回のDXFには、文字の送り0.14mmや改行の間隔4.2mmも入っています。主に差があったのは余白の扱いでした。読み込み時の文字設定を維持し、そのまま使うことで、位置と見た目が合う状態を採用しました。
CADをまたいだ文字の違いは、私自身、AIを使う以前から経験してきました。今回は、登録属性をすべて同じにする探索を続けるより、原図を再現し、作業を続けられる条件を決めることを優先しました。
以前から書き出す側の環境が影響すると考えていても、受け取る側では、その結果に対応することが中心でした。今回はフォントや文字間隔、配置を追い、出力する情報を直して、V-nasで確かめられました。自分たちで渡し方を整え、使う状態まで決められたことで、DXFへの関わり方が変わったと感じています。
速さは、手直しと確認まで含めて考える
画面操作では、入力をまとめる短縮実験も行いました。入力だけなら短くなる区間がありましたが、準備、作図、確認、修正、保存を通した時間には、別の整理が必要でした。
作図方法を比べるなら、形を生成する時間に加え、既存図面と表現をそろえ、人が直して使える状態で受け取るまでを見たいと考えています。
画面操作なら、CADの状態を見ながらその機能で編集できます。DXFなら、整理した図面データを用意できます。スクリプトなら、CADの作図機能へ条件をまとめて渡せます。
AIがファイルを作り、私が使い慣れたV-nasで開く。スクリプトも、私が実行して結果を返す。この分担で仕事が進むことも、今回確かめられました。目的や図面の状態に合わせて選べることに、意味があると思っています。
次の作図が、以前より現実的に見えてきた
以前、DXFが3次元の要素を持てると知ったときにも、使い方への見方が広がりました。V-nasClairスクリプトで3Dモデルを作った検証では、部材別の形状を作り、CADでソリッドへ変換して体積を確かめることも試しています。
今回は2次元の図面1枚で、寸法や文字、二段引出線まで私の描き方へ合わせられました。その積み重ねを見て、3次元のスクリプトも、以前より実務へつなげて考えられる気がしています。
将来、配筋図も描いてもらうことが現実的に思えてきました。そのためには、どの部材にどの鉄筋が入り、どの方向から描いているかを捉える理解が要ります。土工図も、横断、側面、平面をつなぎ、足場や余裕幅、施工順序まで考えて形を決めます。何を描くかを判断する力を育てる開発は、今も続けています。
今回の作図は、継続している樋門エージェント開発の一機能です。共通する図形生成やCADへの受け渡しは、護岸を支援するエージェントにも生かしたいと考えています。
今回の成果の土台には、以前から私が蓄積してきたルールや検証資料があります。一から始めるなら基礎の開発と検証が必要ですが、今回はその資産を受け継ぎ、実物を触って返した修正点を、出力コードや確認手順へ加えてきました。
三つの作図方法が見えただけでなく、図面1枚を自分の仕事の条件へ合わせるところまで進みました。元請会社から受けた条件と元図に沿っているかは人が確認し、判断が必要な事項は元請会社へ確認を求めます。何をAIへ任せ、どこを人が確かめるか。その分担も含めて、使い慣れたCADで仕事を進める選択肢を育てていきます。